ハ長調ミサ

2020年05月11日

新聞を読んでいたらベートーヴェン「ハ長調ミサ」についての記事を見つけました。

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(前略)宗教作品としての魅力でいえば、もう少し若いときに書いた「ミサ曲ハ長調」にあえて軍配を上げたい。こちらは交響曲第5番や第6番と同じ時期、ハイドンの雇い主で知られるエステルハージ公からの依頼で作曲された。

自分の理想を音楽にするのだ!といった意気込みあふれる「ミサ・ソレムニス」に比べると、頼まれ仕事でもあるせいか、ずいぶんと肩の力がぬけている。おかげで、自分の底に流れる音楽がより素直に出ているのではないか。彼自身の信仰心も無防備なまま、実直な美しさとして旋律に宿っている。

こうしたミサ曲には珍しく、歌曲のように典礼文の内容に敏感に反応した音楽が付けられる。たとえば、第2曲「グローリア」で「我らをあわれみたまえ」と歌われると、旋律もさっと翳りを帯びる。第3曲「クレド」は言葉にシンクロして、音楽の変化も著しい。

第4曲「サンクトゥス」は、不器用な人がふと見せるような優しさがいい。最終曲「アニュスデイ」でも、その陰影交えた音色の移ろいがじつに流暢。「我らに平安を与えたまえ」と歌われるとき、音楽は暖かい希望に包まれ、静かに余韻を残しながら終わる。(中略)

ベートーヴェンは、紛うことなく偉大な「改革者」であった。しかし、こうした大看板を自ら意識することなく作られたこれらの作品は、それゆえに、他にはないみずみずしさを湛える。まさにこれも偉大なるベートーヴェン。

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音楽評論家:鈴木淳史氏が書かれた記事より一部抜粋で紹介させていただきました。全文は5/10(日)日経新聞17面 名作コンシェルジュをどうぞ。

曲を紹介している箇所を何度も頷きながら読んでしまいました!3月から始まったハ長調ミサは中断されたまま。今日は楽譜を開いてみようか。再開へ向けて少しずつ・・少しずつ。